je me saurai plus que fair3723: あしひきの 山道越えむと する君(きみ)を心に持(も)ちて 安(やす)けくもなし
◆意味: 山道を遠く越えてゆこうとするあなた、そのあなたを心に抱え続け、この頃は安らかな時とて ありません
。 
Vous qui allez
franchir les routes abru ptes
des apres montagnes
vous porte en mon Coeur si tant
que ne puis repos trouver

3724: 君(きみ)が行く 道(みち)の長手(ながて)を 繰(く)り畳(たた)ね 焼(や)き滅(ほろ)ぼさむ  天(あめ) の火(ひ)もがも  
◆意味:あなたが行かれる道の長道、その道のりを、手繰って折り畳んで、焼き滅ぼししまう、ああんな火があったらなあ

La si longue route
par laquelle vous partez
la voudrais rouler
et mettre en tas pour que puissant
feux celestes la detruire

3725: 我(わ)が背子(せこ)し けだし罷(まか)らば 白栲(しろたえ)の 袖(そで)を振(ふら)らさね 見(み)つつ偲(しの)はむ         
◆意味:いとしいあなた、あなたが万が一、遠い国へ下って行かれるなら、その時は、まっ白な衣の袖を私に振ってくださいね。せめてそれを見てお偲びしたいと思います。

O mon doux ami
si devez vous en aller
veuillez votre manche
de blanche toile agiter
a sa vue me souviendrai

3726: このころは 恋(こ)ひつつもあらむ 玉(たま)櫛笥(くしげ)  明(あ)けてをちより すべなかるべし
◆意味:今のうちは、恋い焦がれながらもまだこうして我慢もできしょう。だけど、一夜明けた明日からは、どうして過ごしてよいのやら、なすすべもなくなることでしょう、

Cette heure encore passe
que je me languisse
[mais coffret precieux]
au dela du point du joure

[Les quatre poems ci-dessus,
la dame des composa a L’heure de la separation.]
 
 右の四首は、娘子、別れに臨みて作る歌

3727: 塵泥(ちりひぢ)の  数(かず)にもあらぬ  我(わ)れゆゑに  思(おも)ひわぶらむ妹(いも)がかなしさ              
◆意味:塵(ちり)や泥(どろ)のような物の数でもないこんな私ゆ えに、今頃さぞかししょげかえっているであろう。あの人が何と もいとおしくてならない、

Pour moi qui ne vaux mieux
que poussiere ni boue
ue ma douce amie
puisse ainsi se tourmenter
de tristesse me remplit

3728: あをによし 奈良(なら)の大道(おほち)は 行(ゆ)きよけど この山道(やまみち)は 行(ゆ)き 悪(あ)しかりけり                      
◆意味: あをによし奈良、あの都大路は行きやすいけれども、遠い国へのこの山道は何とまあ行きづらいことか。

Par les grands Chemins
de Nara a la belle terre bleue
cheminer est aise
mais par ces routes des monts
s’en aller est malaise

3729: 愛(うるは)しと 我(あ)が思(も)ふ妹(いも)を 思(おも)ひつつ 行(ゆ)けばかもとな 行(ゆ)き悪(あ)しかるらむ       
◆意味:すばらしいと私がおもいつめている人、あの子を心にかけて行くので、こうもむやみやたらと、行きづらいのであろうか。この山道は

Pensant a m’amie qui
pour moi est la plus belle
parce que m‘en vais
m’en aller me sera sans doute
bien plus malaise encore

3730: 畏(かしこ)みと  告(の)らずありしを み越(みこし)道(ぢ)の 手向(たむ)けに立(た)ちて 妹(いも)が名告(なの)りつ           
◆意味:恐(おそ)れはばかって、ずっと口(くち)に出(だ)さずにいたのに、越(こし)の国(くに)へと超(こ)えて行(ゆ)く 道(みち)の手向(たむ)けの山(やま)に立(た)って、とうとうあの人(ひと)の名 (な)を 口(くち)に出(だ)してしまった 。

J’etai:la craignant
De prononcer tout haut
quand sur le chemin 
de Koshi faisant mes offrandes
de m’amie j’ai dit le nom


[Les quatre poems ci-dessus.Nakatomi no Asomi
Yakamori les com‐posa au moment de prendre la route]

右の四首は中臣朝臣宅守、道に上りて作る歌                     

3731: 思(おも)ふ故(ゑ)に 逢(あ)ふものならば しましくも 妹(いも)が目離(めかれ)て 我(わ)れ居(を)らめやも
◆意味:思う故(ゆえ)に、逢ふものならば、しましくも、妹が目離れて、我れ居らめやも
 
Si pour re rejoinder
il suffisait que l’on aime
fuc-ce un seul instand
se pourrait-il que je rest
loin des yeux de m’amie

3732: あかねさす 昼は物思(ものも)ひ ぬばたまの 夜(よる)はすがらに 音(ね)のみし泣(な)かゆ
◆意味:明(あか)るい昼(ひる)は昼で、物思(ものおも)いに耽(ひた)るばかり、暗(くら)い夜(よる)は夜で、夜どおし声(こえ)をあげて、泣(な)けてくるばかり。

Aux rouges lueurs
du jour je reste pensif
et toute la nuit noire
comme jais ne fais
que pleurer tant que je puis

◆以下のフランス語万葉集は2017/06/03に、県立万葉文化館図書室で、コピーしました。時間が有れば、順次掲載します。
3733: 我妹子が 形見の衣 なかりせば 何物もてか 命継がまし

Si n'etait la robe
qu'en souvenir me donna
ma douce amie
de quoi pourrais-je m'aider
pour prolonger cette vie

3734: 遠き山 関も越え来ぬ 今さらに 逢ふべきよしの なきが寂しさ

Barrieres et monts lointains
suis venu passant
qu'il n'est de moyen
desormais de vous rejoindre
me laisse desempare
aissait dans mes songes

3735: 思はずも まことあり得む やさ寝る 夜の夢にも 妹が見えざらなくに

Ne penser a elle
en verite le pourrais-je
ah si seulement la nuit
quand je dors mamie
ne par
3736: 遠くあれば 一日一夜も 思はずて あるらむものと 思ほしめすな
Qu'un jour qu'une nuit
parce que je suis au loin
je pourrais rester
sans une pensee pour vous
gardez-vous bien de le croire

3737: 人よりは 妹ぞも悪しき 恋もなく あらましものを 思はしめつつ

Nulle autre que vous
m'amie n'en porte la faute
ah si je pouvais
ne point me languir ainsi
au lieu de me tourmenter

3738: 思ひつつ 寝ればかもとな ぬばたまの 一夜もおちず 夢にし見ゆる
Serait-ce qu'en sommeil
malgre moi je pense a vous
que sans qu'il s'en faille
d'une seule nuit de jais
en songe m'apparaissez

3739: かくばかり 恋ひむとかねて 知らませば 妹をば見ずぞ あるべくありける.
Que si a l'avance
j'avais su qu'il me faudrait
languir de la sorte
j'eusse certes prefere
n'avoir jamais vu m'amie

3740: 天地の 神なきものに あらばこそ 我が思ふ妹に 逢はず死にせめ

De ciel et terre
si les dieux en verite
n'avaient d'existence
sans jamais revoir m'amie
se pourrait bien que je meure

3741: 命をし 全(また)くしあらば あり衣(ぎぬ)の ありて後にも 逢はざらめやも
Que si sain et sauf
ma vie je dois conserver
ah robe de soie
ainsi soit un jour encore
pourquoi ne vous reverrais-je

3742: 逢はむ日を その日と知らず 常闇(とこやみ)に いづれの日まで 我れ恋ひ居らむ

Sans savoir quel jour
sera le jour des retrouvailles
dans les obscures tenebres
me faudra-t-il done languir

3743: 旅といへば 言(こと)にぞやすき すくなくも 妹に恋ひつつ すべなけなくに
Quand on dit voyage
voila qui est vite dit
or mais de m'amie
languir d'amour de la sorte
n'est une petite affaire

3744: 我妹子に 恋ふるに我れは たまきはる 短き命も惜しけくもなし
De ma douce amie
pour ce qu'ainsi je languis
ma breve existence
encore que precieuse
n'a pour moi nulle valeur

右の十四(14)首は中臣(なかとみの)朝(あそみ)臣宅(やか)守(もり)が、
 武生の配所(3770に「味真野」とある)に到着した宅守から都の娘子にまず贈った歌。

3745: 命あらば 逢ふこともあらむ 我がゆゑに はだな思ひそ 命だに経ば

Si restons en vie nous
nous reverrons sans doute
a cause de moi
done ne vous tourmentez
tant pour peu que dure la vie

3746: 人の植うる 田は植ゑまさず 今さらに 国別れして 我れはいかにせむ

Sans planter le champ
qu'hommes plantent d'habitude
en autre province
a present que vous voici
moi que vais-je devenir

3747: 我が宿の 松の葉見つつ 我れ待たむ 早帰りませ 恋ひ死なぬとに
3748: 他国は 住み悪しとぞ言ふ 速けく 早帰りませ 恋ひ死なぬとに
3749: 他国に 君をいませて いつまでか 我が恋ひ居らむ 時の知らなく
3750: 天地の 底ひのうらに 我がごとく 君に恋ふらむ 人はさねあらじ
3751: 白栲の 我が下衣 失はず 持てれ我が背子 直に逢ふまでに
3752: 春の日の うら悲しきに 後れ居て 君に恋ひつつ うつしけめやも
3753: 逢はむ日の 形見にせよと たわや女の 思ひ乱れて 縫へる衣ぞ
3754: 過所なしに 関飛び越ゆる 霍公鳥 多我子尓毛(ミヤコガコニモ)止まず通はむ
◆註・「多」我子尓毛の「多」→「京」の代える
3755: 愛しと 我が思ふ妹を 山川を 中にへなりて 安けくもなし
3756: 向ひ居て 一日もおちず 見しかども 厭はぬ妹を 月わたるまで
3758: さす竹の 大宮人は 今もかも 人なぶりのみ 好みたるらむ              ◆意味: 大宮人(おほみやひと)は、今でも、人をもてあそぶようなことを好んでやって
いるのだろうか。(都にいる君のことが心配・・・・) 
3759: たちかへり 泣けども我れは 験なみ 思ひわぶれて 寝る夜しぞ多き
3760: さ寝る夜は 多くあれども 物思はず 安く寝る夜は さねなきものを
3761: 世の中の 常のことわり かくさまに なり来にけらし すゑし種から
3762: 我妹子に 逢坂山を 越えて来て 泣きつつ居れど 逢ふよしもなし
3763: 旅と言へば 言にぞやすき すべもなく 苦しき旅も 言にまさめやも
3764: 山川を 中にへなりて 遠くとも 心を近く 思ほせ我妹
3765: まそ鏡 懸けて偲へと まつり出す 形見のものを 人に示すな
3766: 愛しと 思ひし思はば 下紐に 結ひつけ持ちて やまず偲はせ
3767: 魂は 朝夕にたまふれど 我が胸痛し 恋の繁きに
3768: このころは 君を思ふとすべもなき恋のみしつつ音のみしぞ泣く
3769: ぬばたまの 夜見し君を 明くる朝 逢はずまにして 今ぞ悔しき
3770: 味真野に 宿れる君が 帰り来む 時の迎へを いつとか待たむ
3771: 宮人の 安寐も寝ずて 今日今日と 待つらむものを 見えぬ君かも
3772: 帰りける 人来れりと 言ひしかば ほとほと死にき 君かと思ひて
3773: 君が共 行かましものを 同じこと 後れて居れど よきこともなし
3774: 我が背子が 帰り来まさむ 時のため 命残さむ 忘れたまふな
3775: あらたまの 年の緒長く 逢はざれど 異しき心を 我が思はなくに
3776: 今日もかも 都なりせば 見まく欲 り西の御馬屋の 外に立てらまし
3777: 昨日今日君に逢はずてするすべのたどきを知らに音のみしぞ泣く
3778: 白栲の 我が衣手を 取り持ちて 斎へ我が背子 直に逢ふまでに
3779: 我が宿の 花橘はい たづらに 散りか過ぐらむ 見る人なしに 
3780: 恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 霍公鳥 物思ふ時に 来鳴き響むる
3781: 旅にして 物思ふ時 に霍公鳥 もとなな鳴きそ 我が恋まさる
3782: 雨隠り 物思ふ時に 霍公鳥 我が住む里に 来鳴き響もす
3783: 旅にして 妹に恋ふれば 霍公鳥 我が住む里に こよ鳴き渡る
3784: 心なき 鳥にぞありける 霍公鳥 物思ふ時に 鳴くべきものか
3785: 霍公鳥 間しまし置け 汝が鳴けば 我が思ふ心 いたもすべなし